Digital Editing

● 授業テーマ
● DTPのプロセスと起源
● DTPの波及と電子出版
● DTPのフローチャート
● 演習:雑誌の解剖
● 課題:自分特集

京都造形芸術大学 通信教育部・情報デザインコース[スクーリング科目]

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● 授業テーマ(1/2)

「編集について考える・DTPについて考える」

 編集者と呼ばれる人の数は必ずしも少なくない。編集業務がそれなりに重要な活動であることを否定する人もないであろう。しかし、編集とは何か、という問いをもつ人は少なく、これまで編集についての概念規定は「編集整理」の具体的手順を示した編集技術と同等にとらえられてきた。技術的側面は編集の成り立ちに不可欠であるが、実質的内容の一部であり、編集そのものの概念が明示されているわけではない。
 編集はドイツ語では「Redaktion」、その語源であるラテン語「redactus」は「整序する」という意味を有し、英語、フランス語の「edit」は出版という語源から転化したものである。ラテン語の「editio」とは「外なる形にして表す」の意であり、「編集する」という内容にあたるラテン語の動詞「edo」には「生(産)む、実現する、演じる」「知らせる、広める、出版する、発行する」「発する、つくりだす」といった意味を見ることができる。これは総じて形の見えないものに「かたち」を与え、「地」の上に「図」を可視化していく営みをさしているといえよう。

 一般的に「編集」は出版、映像などの分野で用いられる用語であるが、人間は社会との関わりにおいて、「見て解釈し、それを明らかにする」という、情報の抽出・関係化・解釈といった「編集」をおこなっており、また、政治や学問、商品もすべてが「編集」されていると捉えることができよう。人間とは編集する生きものであるとも考えられるのである。

 1963年に梅棹忠夫は『情報産業論』を発表し、物質やエネルギーを生産する従来の工業化社会とは異なって、情報産業は「情報」を売って文化的効果を生みだす精神産業であり、工業社会における「商品」の概念や経済理論が通用しない、まったく新しい種類の産業であると規定した。また、産業の発展を、農業、工業、情報産業の三段階に分類し、これを生物学的アナロジーを用いて、内胚葉産業、中胚葉産業、外胚葉産業の時代と呼ぶ。すなわち、農業は消化器官系を充足させることを目的とし、工業は機械によって人間の骨格系、筋肉系を代用することを目的とし、情報産業は脳神経系の充足を目的としている、という対応関係を成立させているのである。さらに、当時はまだ到来していない情報産業時代の価格決定原理を「お布施の論理」と指摘し、商品の記号的価値における内示的意味の存在を示唆している。
 1988年の『情報の文明学』では情報の認識における受信者(ユーザー)中心の立場を鮮明にし、「汎情報論」を展開する。ここではメディアの記号論的な解釈にマクルーハンとの共通の視点を見ることができる。
 『情報産業論』『情報の文明学』を通して梅棹忠夫が強調することは、文明の成立過程や文化の成熟過程が情報の編集によって進んできた、ということであり、巨大化し、多様化する情報社会の展開においては、工業の時代における技術者群に対応するものとして、広義の「編集者群」の存在を指摘し、編集者は情報産業における技師(エンジニア)であると規定している。

「編集」とは、該当する対象の構造を読み解き、それを新たな意匠で再生することを意味する。

「編集」というしくみの特徴は、人々が関心を持つであろう情報のかたまりを、どのように表面から奥に向かって特徴づけていくかというプログラミングなのである。


授業期間
3日間15コマ(22.5時間)1単位

授業概要
本科目では、印刷を前提とした文字情報、図形情報、画像情報の編集についてMacintoshを利用しながら、そのプロセスと方法を学ぶ。雑誌の誌面分析を通して編集とデザインの実際を理解した後に、オリジナルの特集記事の編集、デザインをおこなう。この作業を契機に、編集の考え方を拡大し、情報デザインの基本コンセプトである「情報編集」に迫っていく。
アプリケーション・ソフトは、Illustrator 8.0J、Photoshop 5.0Jを中心に使用する。授業の中で使用するソフトに関する基本的な操作についてはあらかじめ習得しておくこと。

持参物:
日頃よく読む雑誌1冊
アクリル直定規(30B)
MOディスク1枚(230MB)

課題:自分特集
掲載したい雑誌に売り込むための「人物をモチーフとした特集」を企画・制作する。自分に関する情報を素材としてダミーを制作するので、必要と思われる素材(画像データ、テキストデータ、手書き原稿等)をあらかじめ準備しておくこと。



梅棹忠夫
うめさお・ただお
1920−

国立民族学博物館顧問。理学博士。京都大学教授を経て、1974年国立民族学博物館初代館長となる。朝日章、文化勲章など受賞。著書『文明の生態史観』『日本とは何か』など。

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